業界情報

業界情報

会計事務所が行う中小企業経営支援-5

~書籍『会計事務所の経営支援-経営会計専門家の仕事-』(中央経済社)より~
同書籍プレゼント(先着100名様)については文末の案内をご覧ください

管理会計能力と中小企業の財務業績

 かつては学会においても管理会計は規模の大きな企業にとっては重要だが、中小企業にとってはそれほど役に立たないという見解が主流であった。中小企業にとっては経営者の経験と勘こそが重要で、会計は不要か、必要であったとしても経営者の頭の中にあるという見解である。

―中略―

 しかし、近年では、中小企業においても管理会計が有用であるといった研究が行われるようになっている。中小企業やスタートアップ企業でも、管理会計を活用することで資源配分を効率的に進めることができ、ビジネスモデルを見直す能力が向上するといった指摘が行われてきている。

 われわれが2015年に行った調査では、わが国の中小企業でも、基本的な管理会計能力を高めることで財務業績が改善していることを支持する結果が得られた。―中略―つまり、われわれが測定した管理会計能力とは、経営計画を中心に会計的にPDCA(plan,do,check,action)をまわす能力である。分析の結果、経常利益や売上高経常利益率などといった財務業績は管理会計と高い相関関係を持っていることが確認できた。この関係は、企業規模や業種の影響を考慮しても統計学的に成立することが確認できている。

 管理会計を活用するから業績がよいという因果関係だけでなく、業績がよいから管理会計を活用するといった逆の因果関係や、管理会計が効果を持つ企業が管理会計を活用し、効果を持たない企業は管理会計を利用しないといった自己選択バイアスの問題など、分析結果の解釈は慎重に行う必要があるが、基本的な管理会計能力が中小企業の財務業績改善に有効であるという結果は、実務家の直感的理解とも合致している。

会計事務所が行う中小企業経営支援-6へ続く

(記事:理事 吉永茂)

【書籍プレゼントのご案内】

当コラム(全7回シリーズ)は、書籍『会計事務所の経営支援-経営会計専門家の仕事-』第1章(序章に該当)の内容を、文書・図表等の一部を略し、web掲載用に再編集したものです。希望者には本編書籍を1所在地あたり1冊、無償でお届け致します(先着100名様限定・送料無料)。お届け先の郵便番号・所在地・事務所名(法人名)・部署名(必要な場合のみ)・氏名をEメールでお知らせ下さい。受付Eメールアドレスは、下記の通り一般社団法人コンサル技連(略称:CML)の代表アドレスです。Eメールの表題には【書籍希望】の文言を含めていただけると幸いです

なお、お寄せいただいた個人情報を含むお届け先情報は、当該書籍の発送のみに使用し、それ以外の目的には一切利用致しません。

受付Eメールアドレス→ cml@cml-g.com

【書籍概要】

タイトル等:『会計事務所の経営支援―経営会計専門家の仕事』(中央経済社)
定価/本体2,600円+税 256ページ

著者(共著):京都大学大学院経済学研究科 経営管理大学院教授 経済学博士
一般社団法人コンサル技連(略称:CML)顧問 澤邉紀夫

公認会計士・税理士 京都大学経営管理大学院特命教授
一般社団法人コンサル技連(略称:CML)代表理事 吉永茂

© 2019 SCC Inst.