業界情報

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アフターインボイスを考える

・アフターインボイス

インボイスは昨年10月よりスタートしましたが、それにおける準備が不十分な企業が少なく無いのが実態で、こうした企業が制度開始後にインボイスに対して準備をすすめることをアフターインボイスと定義しています。実際に3月末で決算を迎え、ようやくそこに気づいた企業も少なくありません。

今回は、改めておさらいを含めてインボイスを考えていきたいと思います。

インボイスは売り手側と買い手側の両方の視点で考える必要があります。
まず、売り手側ですが、2つの準備が必要です。
1つ目は、適格請求書発行事業者としての登録申請書を税務署に提出をすることです。消費税を免税されている免税事業者の場合でも、取引先より適格請求書発行事業者を求められた場合は登録が必要となり、課税事業者となります。この場合、年間課税売上が5,000万円以下の事業者に限って簡易課税制度を選択することで、仕入額の集計も要らず、請求書の保存も必要なく、消費税に対して、みなし仕入税率を掛けて、納付する消費税を計算できるので事務作業を軽減することが可能です。建設会社の場合は、第3種事業者で70%、一人親方など手間請負での仕事の場合は、第4種事業者で60%がみなし税率となります。例えば、一人親方で売上1,000万円+消費税100万円の場合、100万円×60%の60万円を100万円から差し引いた40万円を消費税として納付できます。しかしながら国税局のサイトから推測すると、個人事業者の免税事業者265万人のうち約41万人しかインボイス登録しておらず登録割合は約15%で、そうした実態から顧問先にしっかりと伝えていくと良いでしょう。

次に2つ目が、適格請求書発行の準備です。
これまでの区分請求書に次の3項目を追加します。(1)税率ごとに合計した消費税額及び適用税率の記載、(2)適格請求書発行事業者の登録番号の記載、(3)端数処理を税率ごとに1回で計算する。の3つです。ここは、少なくともインボイス登録されたほとんどの企業が対応完了してもいるはずです。
一方で対策が不十分なのが買い手側です。2つの準備が必要でこちらのほうが厄介です。1つ目が適格請求書発行事業者なのかどうかを管理・把握しないといけないと言う点です。材料や外注費だけでなく、経費についても全ての取引業者が適格請求書発行事業者かどうかを把握して仕入れた際に、それを区分けして管理しておかないと仕入税額控除ができません。2つ目が免税事業者分については経過措置がありますので、経過措置の期間である2023年10月~2026年9月末までの3年間の仕入は80%が仕入税額控除できますし、2026年10月~2029年9月末までの3年間は50%が仕入税額控除できます。2029年10月からは、仕入税額控除が不可になりますので、免税事業者からの仕入は年月を考慮しながら計算しないといけない事務作業が増える事になります。実際に買い手側となると外注業者である一人親方などをイメージしがちですが、それ以外にも飲食店や商店、フリーランスなど年間1千万円未満の売上であれば免税事業者となります。この様な取引先でも、今後、例えば、2024年9月までは免税事業者だったけれど2024年10月からは適格請求発行事業者に登録し仕入税額控除対象の取引先となったというケースが増える可能性もあり、手作業での処理では現実的ではなく政府もIT導入補助金のデジタル化枠でソフトウェアを導入しインボイス対策を行う企業を支援しています。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で適格請求発行事業者であるかどうかを検索する事は可能ですが、実際に受領した適格請求書発行事業者番号を、その都度、検索し確認することは面倒です。仮に誤って仕入税額控除ができないのに行ってしまうと修正申告が求められます。
こうした対応として国税庁はコンピュータのソフトを導入している場合に仕入登録する時に番号を入力するだけで、国税庁に登録されている適格請求書発行事業者であるかどうかを即時に確認できるWEB-APIという技術を公開しています。こうしたことから、一定の取引がある建設会社では原価管理システムを導入する事で、手間やミスが大幅に軽減できる事を推奨することが適当だと思います。

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