業界情報
DXを推進しようとシステム導入を建設会社が決めた場合、これが成功するかどうかは責任者の力であり、この責任者を誰にするかがDXの成否を分けると言っても過言ではありません。
このとき、役職ではなく個人の資質に注目することが必要です。責任者を選ぶ際、ITに精通している社員が良いか?それとも会社全体の業務に詳しい社員か?答えは両者です。DXは単純なIT化よりも会社全体の業務を見渡すことができる人材が適任です。
原価管理システムを導入する場合を例にとると、複数の業務や部署にまたがって運用を変えることが必要で、部署間で意思統一が図れればよいのですが、ときには考えが一致しないこともあるはずです。その時、責任者に求められるのは業務を俯瞰し落とし所を見つけ、部署間を調整できる折衝力です。逆にITに詳しくても業務を俯瞰できない社員を責任者にすると、後からトラブルが起きる可能性があります。たとえば、現実的ではない運用になってしまい、かえって業務が非効率になれば、社内の反対者も増え、DXが途中で頓挫してしまう可能性すら発生します。
また、責任者を複数置くという考え方もお薦めしません。私は「必ず責任者はひとりにしてください」と経営者の皆さんにお願いしています。その理由は、「責任」を明確にしないと、いつまでも物事が進んでいかない可能性が高くなるからです。責任者を補佐する立場として別の社員を置くのは構いませんが、責任者はあくまでもひとりとすることをお薦めします。
また、社長のリーダーシップも重要です。責任者に任せきりにせず、定期的に進捗状況をチェックし、目標を達成できるかを確認します。DXを取り組もうとするとき、社内から反対意見が生まれる可能性も高く、それをすべて担当責任者に任せるのは負担が重すぎます。社長は責任者がやりやすい環境をつくる意識を持ち目標達成をサポートする必要があります。
私は以前、原価管理システム導入を決めた会社に、私自身がシステムの使い方などを説明しに訪問した時に、その会社の工事部長から猛反対を受け、私の説明を社長がいる時は聞くけれど社長がいなくなると、全く無視をするという場面に遭遇し、システム稼働に苦労したことがあります。ですが、この会社は最終的に原価管理システムをきちんと活用し原価率が20%も向上し利益改善を果たします。それができたのは、やはり社長のリーダーシップの大きさでした。その社長は毎日、原価管理システムの入力状況をチェックし入力漏れがあると担当者に口酸っぱく指導をしていたのでした。DX化の鍵は経営者が「何のためのDXなのか」という点を繰り返し社員に伝えることだと思います。