業界情報

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EXCEL原価管理VS原価管理システム

(1)中堅・中小建設業のシステム化の現状

 建設業を中心として、18年に亘って経営コンサルタントとして全国を指導してきました。100億を超える中堅・中小建設業にあっては、それ相応にシステム化が進み、熟成しているとお考えの方も多いかと存じます。実態はと言えば、100億を超える規模でもエクセルで原価管理を行い、未だにシステム化の検討段階であったり、システム化していても、ITリテラシィが低く、単なる清書のツールにとどまり、データベースを生かせていないケースが多くみられます。その多くは、システム化の入口において、工事項目のマスター登録の十分な検討やルール化、そして、全現場代理人のITリテラシィに差があることを意識した、操作やシステムの意味の基礎教育が欠落している(忙しいという理由など)ケースが多くみられます。システム化は「段取り八分」であり、しっかり取組の姿勢を持って、粘り強くあるべき姿を達成することがポイントです。

(2)原価管理システム化の意義

 コスト競争力強化には、現状の「エクセルによる原価管理」から「原価管理のシステム化」に移行することがなぜ必要かは次の理由によります。

NO.

項目

エクセル見積・実行予算

システム見積・実行予算

見積書・予算書作成時間

×

作成の度に項目を新たに入力する必要があるため、時間がかかる。

過去データのコピペは可能だが、手作業のため写し間違いが多発する。

システムに登録されている頻出の工事項目や品名・その単価が引用でき、作成が速い。但し、最初の工事項目や品名登録に頻出項目を選ぶ手間がかかる。

利益確保のため原価管理の情報共有

×

内訳が単独のエクセルファイルのため、作成者以外がファイルを開いて、或いは紙ファイルをめくって内容チェックに手間がかかり、情報共有が困難である。

実行予算書がシステムに入力されて保管されており、更新されても最新データ情報を確認できるため、実行予算内訳やその改訂につき、関係者の情報共有が容易にできる。

過去データ(前任者作成分他)の参照

×

見積や実行予算は頻繁に改訂されるため、作成者でないと最終版が不明(作成者でも整理が悪いと不明)になり、過去のデータ参照・工事項目や単価参照ができず、属人的(その人しかわからない)になる

システム上では、データは上書きされて最終版が残るため、後から参照しても最終データが確認できる。(過去版を残したければ別名で保存する必要あり)

つまり、過去データ参照や工事項目・実績単価が共有(データベース化)できる。

見積→実行予算→支払実績での利益や原価の計画対実績の管理

×

作成済見積書を実行予算作成時にエクセルのコピペを含む手作業になり、自動参照できない。工事台帳での支払実績も実行予算内訳を参照できないためにエクセルでの総額管理しかできず、予算オーバーが竣工までわからない。

実行予算作成時に見積書を自動参照して、作成がスピーディに正確にできる。また、実行予算コードに合わせて支払をコード入力すれば、予算と対比の支払実績がわかり、予算オーバー等が見える化できて、利益対策が早期に打てる。

工事原価最小化による受注

×

工事項目やそれに属する品目が統一化されていないために、過去の実行予算データを参照が困難(表現が違っても引用できない。例えば「内装壁軽鉄工事」と「壁LGS工事」など)即ち、過去同一工事項目・品名・単価の参照が困難で工事原価の最小化が困難。

工事項目・品名が統一化されており、その項目・品名の過去入力単価が多数参照できる。それ故、各工事項目・品名ごとの最小の単価(最安値購買単価)が参照で可能。即ち、工事原価の当社最小金額を算出でき、当社の持つコスト競争力を100%発揮できる。それでも他社に負ける時は、安い業者を探して勝つ。

入力ミス・計算ミスのトラブルシューティング

×

エクセル見積書・実行予算書は、式の入力ミス入力間違い等が発生すると関連帳票を全て手直しする必要がある。しかし、実際には時間が限られ、直さずに頭の中でミスを本人のみが認識し、共有できない。即ち、ミスが放置状態となり、対策が打てない。

万が一、入力ミス等が発生しても、関連帳票がミスの修正により、同時に修正されるため、ミスの修復が容易である。常に最新の情報を見積・実行予算作成の工務、現場管理者、経理(支払・会計処理)の各担当者が最新原価情報を共有でき、組織としての利益対策が立案実行しやすい。

見積書・実行予算書作成のための準備作業の容易さ

作成者がそれぞれ自分のパソコンで名前をつけて作成できるので、エクセルの操作さえできれば簡単に作成できる。

システム化のためには、

①    当社で頻出する工事項目フォルダを作成し、品名登録をコード付けして行う。(その数、数千項目に及ぶ)ので労力(参照するリストの選定と類似項目の統一化の手間)

②    更に品名ごとの実績単価(ないものは市場単価)の入力手間

つまり準備時間がかかる

運用までの教育訓練時間と管理ツールとしての評価

×

7の「エクセルさえできれば簡単に作成できる」というメリット以外、1~6の全ての原価管理上の問題を抱えるため、間違い防止や利益管理のツールにはならず、他社に対するコスト競争力を持てるツールにはならない。

実行予算作成時の工事項目参照や支払入力時の実行予算項目参照を全員が覚えて使いこなすのに教育の手間と時間がかかる。

7を含め、準備作業が膨大になる。

しかし、この手間と時間という“産みの苦しみ”を脱して、運用が軌道に乗れば、管理ツールとして、上記1から6の受注対策・利益管理ツールとしての大きな力を発揮して、他社に打ち勝つ差別化が可能になる。

 

(3)システム化は意識改革からスタート!

 「エクセル見積・実行予算」は簡単につくれます。ところが、「システムによる見積や実行予算作成・支払管理」は項目の統一化を図らなければならず、また操作方法も実際に使ってみて覚える必要があります。しかも、中高年からすれば“部下である若手社員や経理社員に教わる屈辱“もあり、「やってられない!やめた!」とうい気持ちにもなりうります。しかし、一旦システム化され、運用が軌道に乗れば、エクセルとは比べ物にならない、管理力を発揮できます。
 特に中高年には、PC操作にこれまでの業務のキャリアが生かせず、「やっていられない」との思いがありますが、ツールの使い方は若い世代に習う謙虚さを持ち、「実行予算管理の考え方については、指導力を発揮する」ことで持ち前の力量が発揮できます。

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