業界情報

業界情報

テレワークへの取組みと助成金

 テレワークへの取り組みはコロナ禍以前には主に働き方改革の視点から論じられ、推進されてきた。無論、働き方以外の側面からでも、的確なテレワーク導入は企業業績向上への貢献を十分に期待できる施策といえる。

従前からテレワークの採用を試行し、段階的・部分的にも実施していた企業は、“助走期間”を経て本格的な取り組みに移行できているかも知れない。しかし多くの企業、特に中小企業においては、眼前の新型コロナウイルス感染拡大防止へのニーズに応えるため、緊急避難的に取り組まざるを得ない状況もまた現実であろう。

 

 厚生労働省が募集する「働き方改革推進支援助成金(旧名称:時間外労働等改善助成金)」に「テレワークコース」が設けられている。実際に交付申請にチャレンジするかどうかの視点とは別に、これに示される『支給対象となる取組』から、端的に中小企業が取り組むべき施策の骨格を読み取ることもできる。

下表中の『支給対象となる取組』には、<物理的><技術的><組織的><人的>各対策に必要な要素が並んでいる。細かい適用条件を除くと、“平常時モード”の「テレワークコース」も「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」も、支給対象となる取組は共通している。

但し、厚生労働省の制度は「働き方改革」の視点で構成されているもので、セキュリティの配慮については総務省が示す「テレワークセキュリティガイドライン」を参照するよう促されている。この骨格から展開する制度の詳細や、総務省のガイドラインについては、文末記載のリンク先で確認していただきたい。

 

 助成金制度の概要は下表の通りであるが、平常時の「テレワークコース」は本年度分の新規申請の受付を8月12日で終了している。これに対し、「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」は9月1日から2次募集が始まっている。今年度から来年度にかけて、それぞれのコースがどう運用されていくのかについては、今後のコロナ禍の状況に左右されるであろう。「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」の使い勝手は、緊急時対応として取り組みやすいが、助成額は抑えられている。

 

・厚生労働省/働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html

 

・厚生労働省/働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

 

・総務省/テレワークセキュリティガイドライン(PDF)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000545372.pdf

働き方改革推進支援助成金(テレワークコースの概要比較)

コース名

テレワークコース

新型コロナウイルス感染症対策のための

テレワークコース

支給対象となる取組

(いずれか1つ以上を実施)

・テレワーク用通信機器の導入・運用(※1)(※2)

・就業規則・労務協定等の作成・変更

・労務管理担当者に対する研修

・外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング

(※1)シンクライアント以外のパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象外。

(※2)パソコン、タブレット、スマートフォンについては、レンタル、リース費用が助成対象。購入費用は対象外。

支給対象経費

謝金 旅費 借損料 会議費 雑役務費 印刷製本費

備品費 機械装置等購入費 委託費

「評価期間」を超えるリース契約やライセンス契約等の場合は「評価期間」内の経費のみ。

リース契約やライセンス契約等の一定期間に応じて金額が定まる契約等に係わる費用については、契約期間の開始日が事業実施期間内であるものは3カ月を限度として対象。

支給額 等

対象経費の合計額×補助率

(上限額を超える場合は上限額)

※「1人あたりの上限額」×対象労働者数、又は「1企業当たりの上限額」のいずれか低い方の額。

対象経費の合計額×1/2

(100万円が上限)

成果目標の

達成状況

達成

未達成

補助率

3/4

1/2

1人あたりの

上限額

40万円

20万円

1企業当たり

の上限額

300万円

200万円

補足

「評価期間」における「成果目標」の達成状況に応じて助成。

<成果目標-1>評価期間に1回以上、対象労働者全員が、在宅またはサテライトオフィスで就業するテレワークを実施。

<成果目標-2>評価期間に対象労働者が在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した回数の週間平均1回以上。

主な支給要件は、実施期間中に・・・

・助成対象の取組を行うこと。

・テレワークを実施した労働者が1人以上いること(少なくとも1人は直接雇用)。

 

(記事:理事 吉永茂)

© 2019 SCC Inst.