業界情報

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デジタルインボイスで経理業務が大きく変わる!

海外におけるインボイス制度

 インボイス制度は海外では多くの国がデジタルによって、請求・支払・入金消込・会計処理が速やかに処理できる仕組みを国家レベルで実現しています。日本政府もデジタル庁を設置し「人に優しいデジタル化」を目指していますが、日本の労働生産性は諸外国に比べて低くなっているだけでなく、ここ数年伸び悩むどころか減少もされており、政府は大きな課題と捉え具体化しようとしています。
 OEDC(経済開発協力機構)発表の労働生産性の最新調査結果(2020年)を見ると、OEDC参加38ヶ国中、日本は28位(809万円)で、1位(2,015万円)がアイルランドで2.5倍、アメリカが3位(1,454万円)で1.8倍、オランダが10位(1,185万円)で1.5倍、隣国の韓国でも24位(858万円)と日本の労働生産性は低く、さらに2013年頃から生産性は足踏み状態で、2020年はむしろ下がってしまっています。これはコロナ禍における労働時間の抑制が原因とも捉えられます。これまで勤勉勤労な日本人の長時間労働で、賄えていた人海戦術に頼るアナログな仕事への取組み方からの脱却に、積極的に目を向けてこなかった事でデジタル化が遅れ、労働生産性が諸外国よりもいつの間にか差が広がってしまった、ということではないでしょうか。
 また、生産性だけでなく人手不足も深刻です。みずほ総合研究所の資料(2017年5月)によると労働力人口は2016年6,648万人から、2030年には5,880万人(2016年比で11.6%減)となる見込みで、人員の余裕のない中小企業ほど生産性向上への対策は不可欠となってきます。
 こうしたことで、経産省とデジタル庁は生産性を向上させる一つの手段として、諸外国が取り組んでいるインボイスのデジタル化を実現しようと、2020年7月よりEIPA(デジタルインボイス推進評議会)と一緒に検討を行ってきました。そして、2020年12月にヨーロッパをはじめ、アメリカ・オーストラリア、シンガポールなどが採用しているデジタルインボイスの標準仕様、Peppol(ペポル)の採用を決定し、2022年秋から運用を徐々にスタートしようとしています。
 EIPAは財務会計・販売管理・原価管理などのソフトウェアメーカー等203社(2023年2月8日時点)が参加し、日本版Peppol(JP-PINT)の標準仕様化の完成を目指すと共に、これに対応したソフトウェアの開発・運用を実現していくことになります。
 デジタルインボイスは2023年10月までに、企業間(BtoB)における売り手側からの請求書(電子データ)の、買い手側への送付。また、買い手側の売り手側への支払(電子データ:金融機関への振込)、そして売り手側の入金自動消込と会計伝票作成の自動化を目指しています。

インボイスのデジタル化対応

 デジタルインボイスは電子化ではなくデジタル化です。電子化というのは紙で処理していたものをPDFなど電子データに置き換えるだけのものであったと思います。電子化での業務フローは、ほとんど変わらず大きなメリットが出ないどころか、コスト増や手間が発生してしまいます。具体的には、スキャナやサーバーなどの機器を追加したり、PDFなどのファイルの保存場所や、保存のファイル名称の命名基準などを考え付与し、さらには電子帳簿保存法のルールも加味せねばなりません。
 ところが、デジタル化は業務を劇的に変えます。デジタルインボイス推進評議会(EIPA)が目指しているデジタル化の例を見ていきましょう。
 デジタルインボイスは売り手事業者(A社)と買い手事業者(B社)との取引きをデジタル化します。A社が、B社に対する請求代金11,000円(内消費税1,000円)をA社が利用するソフトウェアで請求書を作成、請求番号123の請求IDが付与され送信されます。デジタルですので送信と同時に、B社の利用するソフトウェアに請求書が届きます。さらにB社では、請求された代金11,000円の支払い(振込処理)も、支払時期に、改めて支払額を入力することなく自動化され、金融機関経由でA社に送金されます。また、A社では、入金された11,000円は、請求番号123の請求IDが付与されたデータとして受領されることで、入金消し込みも自動化されます。
 さらに、会計処理においても図の通り、A社は請求時の「売掛金/売上」、入金処理時の「預金/売掛金」の仕訳伝票データが、B社においても請求受領時に「仕入/買掛金」、振込処理時に「買掛金/預金」の仕訳伝票データが、それぞれの会計ソフトに自動起票されます。
 以上の様に、デジタルインボイスを利用することで、売り手側、買い手側どちらも経理担当者による手入力がなくなり、作業時間の大幅軽減と入力ミスがなくなります。
 この様にデジタルインボイスは、請求書のペーパレス化による印刷コスト・封入コスト、郵送コスト、保管コストが削減されるだけでなく、リアルタイムにデータとして送受信されることで、支払・入金への確認も大幅に短縮されます。すでにデジタルインボイスがスタートしているシンガポールでは、請求〜回収のサイクル期間も約22日間短縮できると公開しています。(シンガポールIMDA公式web)
 デジタルインボイスは業務を大きく変えます!これまで手作業やソフトウェアへの入力が当たり前だったのが、売り手側がソフトウェアに請求入力するだけで、買い手側との企業間の大幅な作業時間の短縮とコスト削減となり経理業務の在り方を大きく変えていくことは間違いないと感じます。

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